(1)法定監査業務 法定監査とは、法により監査の内容及び監査人の責任が規定されている監査をいいます。 ■金融商品取引法に規定する財務諸表監査 金融商品取引法第193条の2において、「金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるものが、この法律の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類で内閣府令で定めるもの(財務計算に関する書類)には、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない」とあります。このことによって実施される監査業務が金融商品取引法に規定する財務諸表監査です。 ■会社法に規定する計算書類の監査 会社法第328条において、「大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない」(第1項)、「公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない」(第2項)とあります。ここで大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表において、①資本金が5億円以上か②負債が200億円以上のいずれかに該当する株式会社と定義されています(会社法第2条第6号)。また、会社法上、会計監査人を設置する義務のない大会社以外の株式会社であっても、定款の定めにより会計監査人設置会社とすることができます(会社法第326条第2項)。この会計監査人設置会社の監査業務が会社法に規定する計算書類の監査です。なお、会計監査人の設置は登記事項となっています(会社法第911条19号)。 ■私立学校振興助成法に規定する学校法人監査 国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人(いわゆる文部科学大臣所轄法人)に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その2分の1以内を補助することができ(私立学校振興助成法第4条第1項)、都道府県が、その区域内にある幼稚園、小学校、高等学校、中等教育学校又は特別支援学校を設置する学校(いわゆる知事所轄法人)に対し、当該学校における教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができます(私立学校振興助成法第9条)。そして私立学校振興助成法に基づく補助金の交付を受ける学校法人は、財務計算に関する書類(計算書類)に、公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければなりません(私学助成法第14条第3項)。このための監査業務が学校法人監査です。 ■労働組合法に規定する労働組合監査 労働組合法第5条第2項第7号において、「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年一回組合員に公表されること」とあります。このための監査業務が労働組合監査です。 ■社会福祉法に規定する社会福祉法人監査 社会福祉法第37条において、「特定社会福祉法人(その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人をいう。)」は、会計監査人を置かなければならない。」とあります。ここで「その事業規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人」とは、社会福祉法施行令第13条の3において、収益(法人単位事業活動計算書におけるサービス活動収益)が30億円を超える法人又は負債が60億円を超える社会福祉法人とされています。また、その事業規模が政令で定める基準を超えていない社会福祉法人であっても、定款の定めにより会計監査人を置くことができます(同法第36条第2項)。これらの会計監査人設置法人の監査業務が社会福祉法人監査です。 ■医療法に規定する医療法人監査 医療法第51条第2項で、「医療法人(その事業活動の規模その他の事情を勘案して厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。)は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。」とし、同条第5項で「第2項の医療法人は、財産目録、貸借対照表及び損益計算書について、厚生労働省令で定めるところにより、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない。」とあります。ここで厚生労働省令第96号において、監査対象医療法人は、①負債が50億円以上または事業収益70億円以上の医療法人、②負債が20億円以上または事業収益が10億円以上の社会医療法人、③社会医療法人債発行法人である社会医療法人とされています(①の要件を満たす病院は300床程度以上、②の要件を満たす病院は50床程度以上が目安となります)。 ■農業協同組合法に規定する農協監査 平成27年9月4日に「農業協同組合法等の一部を改正する等の法律」(改正農協法)が公布され、さらに政省令も平成28年1月29日に公布されて、一部を除いて平成28年4月1日から施行されています。この改正農協法により、平成31年10月1日以降、貯金量200億円以上の信用事業を行う農業協同組合及び負債200億円以上の連合会については、会計監査人(公認会計士又は監査法人)による会計監査を受けなければならないこととされました。 ■その他法定監査当監査法人は、上記の法定監査の他、中小漁業融資保証法に基づく監査実績があります。その他各種ご要望の法定監査に対して、多種多様な監査経験を有した公認会計士により、効率的で効果的な監査業務を提供いたします。 (2)任意監査業務任意監査とは、各種法律により監査が義務付けられていないが、委嘱者の個々の要請に基づいて行われる監査のことです。任意監査は、対象となる財務諸表、適用される財務報告の枠組み、利用目的、監査についての条件、さらには監査人の責任の範囲について、契約又は民法の一般的な規定によって規律されるところが法定監査とは異なります。 ■会社法に準じた任意監査 会社法の規定に基づく法定監査を受ける義務はないが、会社が作成する計算書類等の信頼性を確保して金融機関等からの円滑な融資を受ける等の目的のために、会社法に準じた計算書類の監査を会社の要請に基づき実施するものです。 ■公益法人の任意監査 公益法人は、収益の額が1,000億円未満、費用及び損失の額の合計額が1,000億円未満、負債の額が50億円未満、の全ての要件を充たす場合には、会計監査人の設置は義務付けられません(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令第6条)。しかしながら、上記の基準により法令上会計監査人を置くことが義務付けられていない場合であっても、会計監査人を設置すれば、公益法人認定法第5条第2号により求められる経理的基礎の要件の情報開示の適正性を充たすことになりますし、何よりも、公益法人の適正な財産の使用や会計処理の信頼性が保証されます。したがって、法令上会計監査人の設置義務がない公益法人にあっても、公益法人の公共性と社会的責任の重要性から任意監査を行っている法人も多数あります。 ■社会福祉法人の任意監査 社会福祉法人の計算書類等(資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表、財産目録)は現況報告書や社会福祉充実残額算定シートとともに財務諸表等開示システムで広く一般に公開されます。それら公開される計算書類が社会福祉法人の会計基準に準拠して作成されているか不安な経理責任者も多いかと思います。そのため、社会福祉法の規定に基づく法定監査を受ける義務のない社会福祉法人であっても、会計の専門家としての公認会計士や監査法人によるチェックを受けたいとのご要望に応えた任意監査を実施します。 ■その他の任意監査 その他の任意監査の実績として、(財)日本医療機能評価機構に病院機能の評価を委託している病院において、病院会計準則に基づいた財務諸表が作成されており、それが第三者によって監査されているかどうかの評価項目をクリアするための任意監査の実施があります。 (3)その他の業務当監査法人は、監査保証業務以外に次の様な業務を実施しています。 ■法定監査導入支援 今まで外部監査を受けた経験のない株式会社の大部分は、決算書は税務上の規定を優先した、いわゆる税務基準で作成している会社が一般的です。そのような会社が、何らかの理由で会社法上の大会社になってしまったり、或いは会社法に準じた任意監査を受けることになった場合、せっかく監査を受けても、従来のままの決算書では適正意見の監査報告書を受取ることができない場合が多いと思われます。なぜなら、一般に公正妥当な会計基準といわゆる税務基準では会計処理が異なる点が多いのと、監査を実施する前提としての内部統制が不備で、試査を前提とした監査が実施できなかったりするからです。 ■非営利法人の新会計基準の導入支援 社会福祉法人においては、新たな社会福祉法人会計基準が制定され、平成24年4月1日から適用されていますが、各法人が新会計基準の内容を理解し、移行手続を行うための準備に相当の期間が必要となることが想定されるため、すべての法人の移行期限は平成27年3月末までとなっています。しかし新会計基準は、財務諸表の体系や表示科目の変更、勘定科目の追加にとどまらず、拠点区分の新しい考え方が取り入れられたことで、その導入はかなり手間がかかるものとなっています。 |